文化 · 234年

(ごすしていひょう)

後出師表

文化234年

解説

諸葛亮が第五次北伐に出陣する前に後主劉禅へ奏上した上表文。前出師表が忠誠と希望に満ちた文章であるのに対し、後出師表は「臣鞠躬尽瘁、死而後已」という悲壮な覚悟の言葉で知られる。この年、諸葛亮は五丈原で陣没し、二度と成都の地を踏むことはなかった。

POEM

後出師表

作:諸葛亮 作者の詳細

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臣亮言:先帝慮漢賊不両立、王業不偏安、故托臣以討賊也。以先帝之明、量臣之才、固知臣伐賊才弱敵強也。然不伐賊、王業亦亡。惟坐而待亡、孰与伐之。是故托臣而弗疑也。臣受命之日、寝不安席、食不甘味。思惟北征、宜先入南。故五月渡瀘、深入不毛。并日而食、臣非不自惜也、顧王業不可偏安於蜀都、故冒危難以奉先帝之遺意也、而議者謂為非計。今賊适疲於西、又務於東。兵法乗労。此進趨之時也。謹陳其事如左。高帝明并日月、謀臣淵深、然渉険被創、危然後安。今陛下未及高帝、謀臣不如良平、而欲以長策取勝、坐定天下。此臣之未解一也。劉繇王朗各拠州郡、論安言計。動引聖人。群疑満腹、衆難塞胸。今歳不戦、明年不征、使孫策坐大、遂並江東。此臣之未解二也。曹操智計殊絶於人。其用兵也、仿佛孫呉。然困於南陽、険於烏巣、危於祁連、逼於黎陽、几敗北山、殆死潼関。然後偽定一時耳。況臣才弱。而欲以不危而定之。此臣之未解三也。自臣到漢中、中間期年耳。然喪趙雲、陽群、馬玉、閻芝、丁立、白寿、劉郃、鄧銅等及曲長屯将七十余人。突将无前。賛叟青羌、散騎武騎一千余人。此皆数十年之内所纏択精鋭。非一州之所有。若復数年、則損三分之二也。当何以図敵。此臣之未解四也。今民窮兵疲。而事不可息。事不可息者。住与行劳費正等。而不及今図之、欲以一州之地与賊持久。此臣之未解五也。夫難平者事也。昔先帝敗軍於楚。当此時曹操拊手謂天下已定。然後先帝東連呉越、西取巴蜀、挙兵北征。夏侯授首。此操之失計。而漢事将成也。然後呉更違盟。関羽毀敗。秭帰蹉跌。曹丕称帝。凡事如是。難可逆見。臣鞠躬尽瘁、死而後已。至於成敗利鈍、非臣之明所能逆睹也。
現代語訳

臣亮申し上げます。先帝は漢と賊は両立できず、王業は偏安できないと考え、故に臣に賊討伐を託されました。先帝の明智をもって臣の才を量れば、臣が賊を討てば才弱く敵強いことは固より知っておられました。しかし賊を討たなければ、王業もまた亡びます。ただ坐して亡びを待つよりも、これを討つにしかず。それ故に臣に託して疑われなかったのです。 臣は命を受けた日より、寝ても席が安からず、食べても味が甘からず。北征を思うに、まず南に入るべきと考えました。故に五月に瀘水を渡り、深く不毛の地に入りました。一日に数食を食べ続けましたが、臣は自らを惜しまぬのではなく、王業は蜀都に偏安すべきでないと考え、危難を冒して先帝の遺意に奉ずるのです。ところが議論する者はこれを非計と言います。 今、賊は西に疲弊し、また東に務めています。兵法に乗労あり。これ進趨の時なり。謹んで其事を左に陳びます。 高帝は明らかに日月に並び、謀臣は淵深でありましたが、然れども険を渉り創を被り、危うくして後に安んじました。今陛下は高帝に及ばず、謀臣は良平に如かず、而して長策を以て勝ちを取り、坐して天下を定めんとする。これ臣の未解一なり。 劉繇王朗は各々州郡を拠え、安を論じ計を言い、動いて聖人を引き、群疑満腹、衆難塞胸。今年戦わず、明年征せず、孫策を坐して大とならしめ、遂に江東を併せました。これ臣の未解二なり。 曹操は智計殊絶して人に絶え、其の用兵は彷彿として孫呉の如し。然れども南陽に困り、烏巣に険しく、祁連に危く、黎陽に逼り、北山に幾敗れ、潼関に殆死し、然る後に偽定一時なり。況や臣は才弱く、而して危を以てせずして之を定めんとする。これ臣の未解三なり。 臣が漢中に到りて以来、中間期年なり。然れども趙雲、陽群、馬玉、閻芝、丁立、白寿、劉郃、鄧銅等及び曲長屯将七十余人、突将无前、賛叟青羌、散騎武騎一千余人を喪いました。これ皆数十年の内に纏択せる精鋭にして、一州の所有に非ざるなり。若し復た数年あれば、則ち損じて三分之二ならん。当に何を以て敵を図らん。これ臣の未解四なり。 今民は窮し兵は疲弊し、而して事は息む可からず。事息む可からざるは、住むと行くと労費正しく等しく、而して今を以て之を図らず、一州の地を以て賊と持久せんとする。これ臣の未解五なり。 夫れ平かならざるは事なり。昔先帝楚に敗軍せし時、当時曹操は拊手して天下已定まりしと謂いました。然る後先帝東に呉越を連ね、西に巴蜀を取り、挙兵して北征し、夏侯を授首せしめました。これ操の失計にして、漢事将に成らんとせしなり。然る後呉更に盟を違え、関羽毀敗し、秭帰蹉跌し、曹丕称帝しました。凡事かくの如し、難く逆見せん。臣は鞠躬尽瘁、死して後已む。至って成敗利鈍に至りては、臣の明智の逆睹する所にあらず。